レミー、20歳
パリのモンマルトルで生まれ育ったモンマルトルっ子。幼少時に一家は離散。少年時代は仲間を引き連れて いたずら三昧の毎日。「末は大物ペテン師」と将来を嘱望(?)されたガキ大将だった。
が、大人になるにつれ、仲間は一人ずつ去っていった。職につき、結婚し、子供の世話に追われ…。レミーはそんな社会の既成枠にだけは収まりたくない。さりとて「ペテン師」なんかにもなりたくない。ガキ大将だったころの自由気ままな人生、 そして、夢を追い続ける事こそがレミーの生き甲斐。
彼は、モンマルトルの安ホテル「シェ・トントン」の裏庭に こしらえたお手製マイホーム、通称「ル・ゼップレン」に 暮らしている。同居人は壁に張られた1枚の父の写真だ。この写真、事あるごとにレミーに説教したり訓示をたれたり、 やたら口うるさい。どこまでも自分流を貫くレミーに、父の写真は忠告する「レミー、女だけには気をつけろよ!」
「ボヘミアン」達の街、パリ。
花の都パリは、さまざまな人種が集まる街。
その日暮らしの大道芸人、人生の切なさを歌う詩人、 叶わぬ恋を奏でるミュージシャン、 彼らのように何物にも囚われないで放浪する者、すなわちボヘミアンの街でもある。
メニルモンタン地区のいかさまトーマ、 ペール・ラシェーズ地区の墓場のギー、 カルチエ・ラタン地区の生き字引のローラン、グルネル地区の海賊ミッシェル…。
レミーは、かつては「稲妻レミー」レミー・レクレールと呼ばれ恐れられた不良で、 将来は性悪の「大物ペテン師」になるものと、誰もが思っていた。
しかし、ガキ大将から不良へ、挙句は「ペテン師」という人生の転落ルートを、彼は拒否した。「善良な市民」になるのは退屈だが、彼らを食い物にする「ペテン師」も好きじゃない。
「善良な市民」でも「ペテン師」でもない、レミーは自由な放浪者、レミー・ラ・ボエームとして生まれ変わったのだ!
いたずらは達人級!
オレはガキのころからいたずらの天才と呼ばれたもんだ。
ケーキ屋をだましてケーキバイキングをやったり、パリコレと称して女の子を薄着にさせたり、いろいろやったぜ。
大人になった今でも意気込みは同じ。だが、スケールは違う。
イヤミな先公のカバンにゴキブリ入れるのはもう卒業だ。木箱に入ってすべり下りた階段を、今じゃ車で駆け下りる。子供の遊び心と大人のスケールがエネルギー源なのさ!
口説きとは美学である!
レミーにとって女性は芸術、口説きは美学である。ブロンド、茶髪、赤毛、青い目の女、ぽっちゃりした女、 気の強い女、内気な女…。
すべての女性は魅力的で、 すべての女性はレミーが挑戦し克服すべきターゲット。耳をくすぐる甘いセリフ、胸ときめくシチュエーション、 そして心にくい気配りがあれば、乙女心はイチコロさ。まァ、ずるいテクニックを使った事もあったかな…!
フリーターの道は険しい!
レミーは窮屈な社会の枠にだけは嵌まりたくない青年だ。
普通の恋、普通の仕事、普通の人生になんてさっぱり興味がない。自分の好きな時に好きな事をする、それがレミーの流儀だ。しかし世間の風は向かい風、お金だけはいかんともしがたい。レミーのフリーター生活はかくして始まる。
とはいえ彼の事、どうせやるなら今までにない事をやってやれ。貴族のペットの結婚相手を探したり、1日だけ社長代理を務めたり、 ユーモアとエスプリにみちたレミーの大胆な発想は尽きる事がない。
夢は大きく持て!
子供の想像力は無限である。
しかし大人になるにつれて、誰もが大人社会の押しつける壁と、 自分自身で造った囲いの中に閉じこめられてしまう。レミーはそんな壁や囲いを素通りして大人になっていきたい。 いわば「子供の法則」を「大人の世界」に持ち込んで生きている。 それが幸せであるための最良の方法だと信じているのだ。そして――そんな「ボエーム=放浪者=」の生き様に、 「かつて子供だったすべての大人達」も喝采を送る日がくるだろう。
パリは全世界の人々を魅了する憧れの街。
木の葉散るマロニエの下で寄りそう恋人達、
そよ風に長い髪をなびかせ歩くパリジェンヌ達、
着飾った晩餐の貴婦人の如くそびえる夜のエッフェル塔 、
街中を漂う甘い空気に酔いしれるロマンティスト 達 。
そんな街を自由気ままに生きる大きなガキ大将、
それがレミーだ。